リーファトロジーの哲学 / Philosophy of Lifatology

美しき曲々の和訳、遺書としての。時に考察

概念的枠組み――学部5年間を振り返って

メモ① 


 2017年の春、僕は大学へ入学した。先日、僕は技術哲学についての卒業論文と、大衆音楽の社会学についての簡単なレポートを提出し、卒業要件に定義されているところの学業をすべて修めた。単位の計算を間違っていなければ、僕は2022年の春、大学を卒業することとなる。そして、金融系の一般企業に就職することになる。

 僕の学部5年間は、ほとんど学業に捧げられた。初めの2年は目的もなく、卒業に最低限必要な単位をすべてかき集め、人文・社会科学(時に自然科学)に属する分野を浅く広く知った。3年次からは自学癖が付き、まずは社会学を半年間網羅的に学んだ。次に、英国の大学へ長期交換留学に行き、そこでも社会学を学んだ。帰国後、4年生になり、就職活動が始まった。そこでも、就職活動自体を哲学的・社会学的に自分なりに理論化し、生み出した理論を面接やESといった実践に結びつけようとしていた。マーケティングも熱心に学んだ。5年生には、技術哲学の卒業論文に取り組んだ。日本ではそれほど有名ではない技術哲学者を取り扱い、英語の文献を多く読んだ。

 もちろん、僕がこれまで半ば功名心から学んだことなど、真に熱心な学部生や、研究者を志す大学院生らの足元にも及ばない。僕が得意なのは、単位をかき集め、テストで良い点を取ることだけだったように思える。ただ、それでもなお、一般的な水準から見て多くを学んでみて、僕は以下のようなことを確信するに至った。すなわち、知を学ぶとは、大いに言葉=概念=世界の切り分け方を学ぶことであると。そして、人文社会科学的な知は特に、抽象的でそれ故に汎用的な語彙を僕らに与えてくれると。

 僕はおそらく、今後修士課程にも博士課程にも入らないと思う。退屈で飽き飽きしてしまうだろうから。したがって、僕は得た知識を忘れ続けるだろうと思う。なぜなら、学術的な知識は往々にして、ビジネスにも実際的な生活にも関連を持たないからだ。ただ、この5年間で学んだ中で、僕は以下の2つを大いに活用し続けていくだろう。一つに英語。そしてもう一つに、人文社会科学的な思考を可能にする、概念的な枠組みである。この意味で、僕は哲学者・社会学者であり続けるかもしれない。ここで僕は、それらの枠組みの内で思いつくものを、つまりは5年間で僕の血肉となったものを列挙してみたいと思う。願わくば、学部生活の振り返りに代えて。


・空間/時間
・真/偽
・善/悪
・美/醜
・友/敵
・同一性/差異
・適切/不適切
・コスモス/カオス
・人間/自然
・有/無
・一般/特殊
・全体/部分
・実質/形式
・目的/手段
・原因/結果
・基礎/応用
・具体/抽象
・絶対/相対
・必然/偶然
・理論/実践
・多様/収斂
・事実/当為
・現実/可能
・概念
・性質
再帰
・存在/認識
・唯名/実在
・合理/経験
アプリオリ/アポステリオリ
・観念/唯物
・主観/客観
・理性/経験
・事実/解釈
・目的/機械
・本質/構築
・内在/超越
・凝縮/発散
・緊張/弛緩
・統合/分解
・現実/物象
帰納/演繹
・即自/対自
・承認/拒絶
・テーゼ/アンチテーゼ
・媒介
・文明/歴史
・経済/社会/政治/文化
・個人/社会
・主体/構造
・作用/反作用
・自由/決定
・因果/相関
・制度/行為
・規範/逸脱
・合意/葛藤
・利害/権利
・機能/意味
・自利/利他
・使用/交換
・交換/贈与
・生産/消費
・労働/余暇
・私有/共有
・生活世界/システム
・権力/貨幣/技術
有機/機械
・垂直/水平
ヒエラルキー/ネットワーク
・ケア/キュア
・記述/規範
・記述/分析
・意味/含意
・通時/共時
・外延/内包
シニフィアン/シニフィエ
・ディノテーション/コノテーション
・文脈


 

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